INDEX 2 (基本的にこの記事が一番上に表示されます)

このブログは、おのにしこぐさの小説ブログです。おもにBL作品を扱っています。
作品Indexです。INDEXは二つあります。こちらは比較的新しい連載です。

◆バカ、おまえとキスしてどうするんだよ。
俺こと工藤真広と高木悟郎は大学四年間ずっと一緒にいたくされ縁の仲だった。卒業してから五年、都会のど真ん中で再会した悟郎は昔と変わらなくて、だけどやっぱり違うようでもあって。昔と同じように会うようになりながら、俺はわからなくなる。俺は悟郎とどうしたいのだろう…。
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おまけ編◆なあ、俺、おまえとしたいんだけど。
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おまけ編◆どうしようもなく離れがたく悲しいこと
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おまけ編◆クドーくんにぼくがかなうわけがない。
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おまけ編◆クドーくんはぼくとセックスがしたいらしい。
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おまけ編◆欲しがらない恋人と
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おまけ編◆欲しがる恋人と
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◆三年目の。
俺こと大神勇次は会社の先輩の黒峰洸さんと付き合っている。…付き合っているはずだ。全然デートしてないし、メールの返事もなかなかこないけど! この付き合いはもう三年目になる。世間では三年目の浮気なんて言葉があるらしいけれど…。
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◆水になる。
久坂七生といると、水が合う、という言葉を辰巳大輔は思い出す。共通の友人を介して知り合った久坂とは趣味が合い、一緒にいると心地良かった。やりがいのある仕事、居心地の良い友人と趣味があれば人生は順調で、恋愛なんて面倒なことは必要ない。そんなふうに思ってきた辰巳だったが…。
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◆原田という男
新名学は入学したばかりの大学の片隅で奇妙な男原田怜に出会う。原田は初対面の新名にご飯をたかり、お礼と称して合コンに誘い、その帰りに新名の部屋に泊まって、そのまま部屋に居着いてしまう。強引な原田に流されるように新名は同居生活に慣れていくが……。
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◆ラーメンと嘘と
オタクで地味ポジションを確立し個人主義を貫く田村公章と、クラスの中心で多くの友人に囲まれて笑い、光のあたる場所にいる青木耀史。話題も趣味も生活スタイルもなにもかもが違うはずなのに、いつのまにか一緒に飯を食う関係になって……。
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INDEX 1 (こちらは比較古い連載のINDEXです)

作品INDEXが長くなって重くなってしまったので、2つに分けました。
こちらは古い連載。ずるずる長くなっちゃうパソコン表示のために、閉じておきます。
使いづらかったら、またす表示のしかた考えます。

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おのにしこぐさ著作
●既刊
「臆病な背中」新書館 ディアプラス文庫(2006/2/8)
「このままではいられない」アスキー・メディアワークス B-PRINCE文庫(2012/11/7)

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春の空気 (4)


 小嶋は覚えていないだろう、あのときのことなど。
 あれから三上はずっと小嶋のことを見つめている。
 それは三上と小嶋本人だけが知っている、秘めやかな想い。
 ふとしたきっかけで冬の終わりに想いを告げた。
 けれど、そうと知ってもなお、小嶋は三上に接する態度を変えなかった。いつだって自然に接し、当たり前のように笑って。今までどおり隣で笑ったり酒を飲んだりすることを普通に受け止めてくれた。
 その残酷なほどの、無邪気さ。
 ──切ないほどに、小嶋は分かっていない。
「…………」
 三上は瞼を押し上げて、目の前で眠る小嶋の寝顔を見つめた。
 小嶋は本当には分かっていない。
 叶えられない想いを抱くその胸の重さ。あくまで友人として接し続ける苦しさ。どんなふうに三上が小嶋のことを想っているか。三上の〝好き〟がどういう意味を持っているのか。いつからそんな想いを抱きながら接してきたのか。彼は知らない。どんな欲望を胸に抱き、想像の中で三上が小嶋をどんなふうに喘がせているのか──小嶋は想像もしないだろう。
 このままドアに鍵をかけてこの小さな部屋に閉じ込めて、抵抗も叫び声も甘い泣き声もすべて封じ込めてしまおうか。
 二人きりの部屋で不意に胸に滑り込む想い。
 それは優しくしたいという想いと相反する醜い欲望。
「……小嶋?」
 足音をたてずに近づき、小さな声で呼びかけたが、反応はなかった。
 すぐ傍らに立って小嶋のくせっ毛を見下ろす。
 ──もっと警戒しろよ。俺はおまえが思っているほど、紳士じゃないよ。
 けれど小嶋は警戒などしないのだ。たとえ今ここに二人きりでいることに気づいても、彼は疑いもせず、三上の前で寝るだろう。そんな小嶋のありようを嬉しく好ましく思う一方で、その信頼が重く苦しく心に圧しかかる。
 知ってもらえるだけでいい、気にかけてもらえるだけでいいなんて、本当は綺麗事だ。小嶋の心が欲しい。その眼差しを、その唇を。その身体を。小嶋のすべてを手に入れたい。……想いが叶わなくてもいいと自分に言い聞かせながら、もっと多くを望んでしまうのは、自分の弱さだ。
 その弱さを押し殺し、まるで祈るように自らの理性にすがりつく。
 優しくしたいんだ。
 今はまだ、彼の隣で、笑っていたい。
 ──だからせめて。
 三上はゆっくりと身体をかがめて、祈るようにそっとそのやわらかい髪にくちづけを落とす。
 せめて、もう少しだけ、このままで。
「ん──、」
 まるでその感触に気づいたかのようなタイミングで不意に小嶋が身じろぎをした。慌てて身体を起こすと、小嶋が眠そうに両手で顔をぬぐいながらゆっくりと頭を上げる。身体を起こしながらくしゃくしゃの髪をかきあげて──ようやく隣に立つ三上に気づき、不思議そうに目を瞬かせた。
「あれ? 三上、いつ来たの? てか、俺、寝てた?」
「寝てたよ」
 不自然なほどすぐ近くに立っている三上をぼんやりと見上げて、さすがにこの距離はおかしいと思ったらしい、訝しげに小嶋は顔をしかめた。
「三上。──今、なんか、した?」
「してないよ」
 悪びれもせずそう返していた。疑わしそうに小嶋が顔を歪める。そういう顔がいっそう悪戯心を煽るのだということに残念ながら小嶋は気づいていない。
「……本当に?」
「なんだ、して欲しかったのか?」
「違う!!」
 真っ赤になって返す小嶋の純情さが愛しかった。たまらず後ろから抱きしめるようにテーブルに手をついていた。ちょっとした悪戯は、無邪気すぎる小嶋へのせめてもの報復だ。
「……っ、三上!」
 反論の声を上げながらも、逃げるでもなく小嶋はただ体を強張らせる。
 その身体をこのまま腕の中に閉じ込めてしまいたい──。
 強く強く抱きしめて、俺だけのものにしたい。
 叶わない想いを胸の奥で押し殺す。
 背中と胸が触れ合わない距離で、小嶋の身体がわずかに震えるのを感じた。そっと俺は小嶋の肩口に額を押し当てる。──期待してはいけない。望んではいけない。決して彼が振り向くことなどないのだから。
「……三上?」
 小嶋が困ったように名前を呼んだ
「────」
 大丈夫だ。俺の理性はまだ保っている。
 小嶋を傷つけたりしない。
 これ以上バカな願いを抱いたりはしない──。
「小嶋、」
 ──好きだよ。
 胸の内だけでそう想いを告げて。
 俺は肩口に額を当てたまま、囁いた。
「……すごい、いい匂いがする」
「このっ、変態!!」
 そのあまりの言いようにハハッと笑って、三上は小嶋から離れた。
 まるでなにもなかったかのような顔を取り繕って。
「なあ。小嶋、昼、食べた?」
「…………まだだけど」
 小嶋はまだ困ったような照れたような複雑な表情をしていた。三上は彼の戸惑いを打ち消すように彼に笑いかける。
「なら、ラーメン食べに行かないか。南口に熊本ラーメンの店ができたって」
 小嶋の返事は聞かなくても分かっていた。
 ──今は、それでいい。
 今は、まだ、このままの関係で。──いつもどおり同級生の顔で三上は笑った。



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以上。はい。他の続きを頑張って書きます。



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春の空気 (3)


 小嶋はそのあと先輩に勧められて三杯も続けて日本酒を飲みほした。女の子へのアプローチを邪魔された腹いせだと傍から見ていてもわかったが、小嶋は気づいているのかいないのか、そのまま先輩を巻き込んで楽しそうに笑っていた。
 飲み会慣れしているんだな、と三上は思った。
 彼は日本酒を続けざまに飲んではいたが、しっかりと途中途中で水を飲んでいた。しかも自分の酒量を知っているのか、さらに酒を勧められてもなんだかんだとうまくかわし、やがて誰に言われるでもなく自分でトイレに立った。なんとはなしに気にかかって後を追うように席を立ってみれば、小嶋はトイレ前の上り階段に座り込み、頭をうなだれていた。
 小嶋、と呼びかければ、吐きそう、なんてうめくような声が返ってくる。勢いよく飲んでいたわりにはそれほど酒に強いというわけではないようだ。それなのにあんな無茶するなんてなにを考えているんだか。
「立て続けに飲むからだよ。──水、もらってこようか」
「いや、いい。も、席戻るし」
「立てるか?」
「優しいな三上クン。さっきから何人も声かけてくれたけど、手をさしのべてくれたのは三上だけだよ」
 顔をあげてわずかに笑む。その笑みになぜかドキリと心臓が高鳴った。
 なんだろうこの感じ。胸騒ぎに近いような、なにか心を動かされる感覚。三上は自分自身のこころの動きを図りかねて、思わず小嶋から視線をそらしていた。
「──小嶋はすごいな」
「え? なにが?」
「なにがってさっきのだよ」
 さっき? と小嶋が聞き返す。
 思わず三上は小嶋を見返していた。きょとんとして目を丸くして彼は、なにのことを指しているのか、本当に分かっていないようだった。
「……だから、さっき、水落さんの、」
「え? 俺、なんかしたっけ? ……なんかもうよく分かんねえんだけど」
 情けない顔をして頭を抱える小嶋の様子に嘘や誤魔化しや照れ隠しなどは見当たらず……。三上は息を飲んだ。忘れている。──というか、気にも留めていないのか。
「小嶋、……酔ってる?」
「んー、さすがに日本酒四杯はキビシイねー」
 聞けばそんな答えが返ってくる。記憶が飛ぶほど酔っているわけでもないようだ。
 ……つまり、さきほどのあれは、小嶋にとっては特別なことではないということ。正義感を振りかざしたかったわけでもなく、フェミニストだからということでもなく、ごく当たり前の、普通のことをしただけなのだろう──彼にとっては。だから記憶にも残らない。
 思い知らされて、不意にぞくり背筋に震えが走った。
 ……普通はできない。あんなふうに自然に誰か助けたりすることはできない。
「小嶋、」
 呼びかければ、小嶋は額を押さえながら顔を上げた。目の前の三上を見て、ゆるりと頬を緩ませる。
「……ああ、そろそろ戻る?」
「おい、」
「ん? へーきへーき。ひとりで立てるから。って──あ、」
 おぼつかない足取りが気になって手を差し伸べれば、案の定小嶋は階段から立ち上がろうとした途端、バランスを崩してとっさに三上の肩に手をついていた。反射的に三上も手を伸ばして小嶋の腰を抱いている。思ったより華奢な身体だと思った。
 あらら、と小嶋は照れたように笑った。
「わりぃ」
「いや」
「──三上、」
 肩に手を置いたまま振り向いた彼と、間近で視線がつながる。
 小嶋は笑った。……ただ自然に、やわらかく。
「サンキュな」
「────」
 ……そのとき。
 そのとき、胸に湧きあがった感情を、三上は、うまく言い表すことができない。
 あこがれ、うらやみ、嫉妬、悔しさ、無力感──。そのすべてであり、そのどれでもないような、不可思議な感情。好きだとか嫌いだとかそういう感情の芽生えなどではなく、もっとなにか心の奥底を揺さぶられるような感覚。
 まるで根底から覆されるかのように。
 まるで押し流されるかのように。
 たった一瞬で、心を奪われていた。
 どうあがいてもきっと彼にはかなわない。そんな確信が胸に閃いた。きっと太刀打ちなんてできない。きっと手には入らない。きっと想いは叶わない。……痛いほどに、そう三上は思い知った。
 ──それが、三上が小嶋に恋に落ちた瞬間だった。


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ちなみに単行本発刊する際のデビュー紹介サイト的なもの用に2パターン書いたSSの1つ。もう一つはこちらで読めます。



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春の空気 (2)


 正直、初めて会ったとき、三上は小嶋のことをただ騒がしいだけの男だと思っていたのだ。
 人懐っこく無邪気なお調子者。クラスの最初の飲み会ですぐにその性質を明らかにして、小嶋は入学からわずか半月足らずでクラスのほとんどから名前を覚えられていた。どうやって人間関係を築こうかと一歩後ろに引いて見ていた三上とはまさに対極にいそうなタイプだと、そんなふうにしか思っていなかった。
 その第一印象が変わったのはゴールデンウィークに入る直前のこと。
 クラスだけでなくサークルなどでも新歓コンパが続いていた中で、飽きもせず飲み会の席だった。
 親睦会という名のそれは、同じ学科の一つ上の先輩たちと新入生たちが集まった飲み会だった。さすがに有志による飲み会ということで全員が参加しているわけではなかったが、数えると合わせて三十人を超える大所帯になっていた。
 学生向けの安い居酒屋の二階。その広い座敷の部屋で、一年と二年が織り交ざって座って──そのときたまたま小嶋と隣り合わせたのだ。
 それまでほとんど話したこともなかったのに、小嶋は隣になった三上を見て、なあなあ、とごく親しげに笑いかけた。
「三上って、タバコ平気なひと?」
「え?」
「だから、」
 言って、手にした煙草をこちらに見せてくる。隣で煙草を喫ってもいいか? と尋ねるその仕草に、三上は少しだけ意表をつかれていた。そんなことを気遣うタイプだとは思っていなかったのだ。
「──ああ。俺は喫わないけど、隣で喫ってるぶんには構わないよ」
「そ? よかった。最近はわりとどこ行っても肩身狭くってさ」
 早速、小嶋は取り出した煙草をくわえて火をつけていた。おいしそうにひとくち喫い、天井を仰ぐようにして煙を吐き出す。その慣れた手つきから彼の喫煙歴がそう短くないことがわかった。意外だな、なんて思う。陽気で明朗な彼が高校時代から煙草を喫っているという姿はなぜだかうまく想像がつかなかった。
 各自の手元にビールグラスが配られ、飲み会がはじまれば、小嶋は率先して乾杯をし、先輩相手にも如才なくお酌を交わしていた。世慣れている、というべきなのか。彼は初対面の人を前にしても身構えることなく、よく食べよく飲み、そしてよくしゃべりよく笑った。間違いなく集まった新入生の中で、彼が一番この場に溶け込んでいた。
 少し緊張まじりにはじまった親睦会も、この一ヶ月足らずで何回やったかわからない新入生の自己紹介がひととおり終わったころには、盛り上がりをみせはじめ──三上の隣は、すでにずいぶん杯を重ねたようだった。もうかなりできあがっている様子で小嶋が不意に三上を振り返り、相好を崩す。
「お、三上。三上って涼しい顔して意外にイけるクチなのネ」
「意外ってなに」
 だって、と言って、酔いに任せたまま小嶋は無邪気な笑みをもらす。
「学級委員みたいな顔してるから。お酒とかあんまり飲まない人かと思ってた。第一印象って信用おけないよな」
「…………」
「──そうだ。なあ、三上って麻雀できる? 実家からこっそり麻雀牌持ってきたんだけど今度うちで麻雀しない?」
 なんとはなしに返す言葉に迷っているうちに小嶋はあっさりと話題を変えてしまっている。人の返事を聞いているのかいないのか、まるでマイペースに会話を続ける小嶋に三上は呆れた。
 なんだ、まだコドモなんじゃないか。世慣れているというよりは、むしろなにも考えていないかのような様子に、思わず三上は改めて彼を見やっている。
 中身の残っているビール瓶を探して、手近にある瓶を一本一本持ち上げる様子は真剣そのもの。その横顔にはまだどこか幼さが残っていて。……きっとモテるだろうな、と三上は思った。母性本能をくすぐるタイプとでもいうのか。その好感のもてる顔立ちや邪気のない陽気さは、きっと女性に好かれることだろう。
 ──まあ、顔は、わりと俺も好みなんだけど。
 バカだな。一瞬でもそんなことを思った自分が愚かしくて三上は少し笑った。大学で恋人をつくるつもりはないのだから、そんなことは関係ないのに。
「なに? 今、笑った?」
 新しい瓶を見つけた小嶋がふと振り返る。訝しげな顔。すぐに考えていることが顔に出る。本当にオコサマだな。それが可笑しくて、洩れそうになる笑いを隠すようにうつむいた。
「笑ってないよ。それより小嶋のグラス空いている」
「三上が先だって」
 小嶋が、まあまあ飲みなよ、とビール瓶を持ち上げてきて、三上も笑ってグラスを持ち上げた。
 周囲を見回せば、先輩後輩が入り混じってみんな少人数で盛り上がり始めている。親睦を深める、という目的は達成されているようだ。
 小嶋は器用に泡をたてながらグラスにビールを注いだ。泡の立て方が堂に入っている。よほどビールが好きなんだろうな。端々から感じられる彼の無邪気さは、子どもっぽいと非難するよりも、なんとなく微笑ましく好ましい。
「じゃあ次は小嶋だ」
 そう、彼に返杯するためにビール瓶を受け取ろうと手をのばしたときだった。
「──ねえ、アキちゃん、せっかくだから飲もうよ、ね?」
 不意にそんな声が耳をかすめた。
 思わず手を止めて顔を上げれば、向かい合っていた小嶋と目が合う。その声を聞いたのかいないのか、小嶋は不思議そうに目を瞬かせた。三上はさりげなく視線をあたりに向ける。
 声はテーブルを挟んで正面、一年生の女の子の隣に座った先輩のものだった。女の子は困った顔で勧められるお酒を断っている。
「あの、私、お酒、苦手なんです」
「またまたそんなこと言っちゃって、いいじゃんいいじゃんもう大学生なんだよ?」
「あの、だけど……、」
「飲んだらおいしいって絶対! こういう機会でもっとお酒飲んでいかなきゃいつまでも飲めないよ?」
 目の前で交わされる会話につい三上は眉をひそめていた。先輩であることをいいことに強引に酒を勧めるやり方は、見ていて気持ちのいいものじゃない。お酒を強要したりイッキ飲みを勧めたりするのはバカのすることだ。そんなこと大学の飲み会を経験してない俺たちでもわかることなのに……。
 先輩は無理矢理押し付けるように日本酒の入ったグラスを彼女に渡した。
「ほら、コップ受け取っちゃった! もうダメ、もう返品は受け付けないから! 飲まなきゃ帰れないよ」
「そんな。困ります、」
 女の子は半分泣きそうな感じで途方に暮れていて。だが彼女の近くには他に助けになりそうな女性の先輩や新入生もいない。
 これは本格的にマズイな、と三上は思った。なんとかやめさせなくてはいけない。それも先輩の顔を潰さず、場を壊さず、婉曲に、うまく──。
 ──そう考えたときには、すでに小嶋の手が伸びていた。
 え? と思う間もなくテーブルに身を乗り出して、小嶋はさっと彼女の手に合ったグラスを取り上げている。
「先輩! そんなカワイイからって水落ばっかり可愛がらないでくださいよー! ボクも先輩の愛がほしいっ、いただきまーす!!」
 一気にまくしたてて小嶋はその日本酒を飲みほした。突然グラスを奪われた女の子も、予期せず横槍を入れられた先輩も唖然としてそんな小嶋を見上げる。
 三上も呆然と彼を見やっていた。
 小嶋はそんな二人の視線にまったく構った様子なく、カツンと勢いよくテーブルにグラスを置く。そして彼はにっこりと笑った。
「──先輩の愛は一気にキますネ! 直球ッス!」


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……懐かしいなあ。このSSを書いたのさえ云年前。時の流れっておそろしい。まあ良い思い出程度に。


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BL作家と名乗るにはおこがましいおのにしこぐさです。作品を世に出せるようがんばります。

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